現在、新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界的に旅行需要が停滞している状況にあり、訪日外国人旅行(インバウンド)受け入れは現実的ではないように思われるかもしれません。
一方、新型コロナウイルス感染症の拡大以前は、日本を訪れたインバウンド(外国人旅行者)は過去最高の3,18 8万人(2019 年)となったことをはじめ、世界における国際観光客数は増加トレンドにあり、アフターコロナにおいて、インバウンドは引き続き魅力的な消費対象者となると考えられます。
また、農林水産業を営む事業者がインバウンド受け入れに取り組むことは、これまで「当たり前」としていた自身の事業の魅力や強みを見つめ直すことにつながり、事業の付加価値創出にも役立つものになると考えます。
近年、「モノ消費」から「コト消費」へのシフトが叫ばれています。「モノ消費」とは商品やサービスを所有すること自体に価値を見いだす消費行動のことで、一方「コト消費」とは、その商品を所有すること、サービスを利用することによって得られる経験や体験を重視する消費行動を指します。
インターネットの普及に伴い、世界中でさまざまな国のモノ自体は手に入るようになり、消費者行動や心理が変化したことが、コト消費の背景にあると考えられています。つまり、各国の旅行者のニーズは、その地でしか体験や交流ができない「コト」へ向かっています。
農林水産業には、生産や販売交流といった、コト消費の要素がたくさん含まれており、インバウンド対応に取り組むことは、事業のブラッシュアップや新たな価値の発見につながります。
愛知県には個性的な農林水産事業者が多く、地域ならではの特産品も数多くあり、また魅力的な食文化を形成しています。このような愛知県の強みを生かし、農林水産業における、インバウンドに向けた観光資源の整備を行うことで事業の付加価値を高めていただきたいと考えています。
また、インバウンド対応には、事業者自身の整備はもちろん必要ですが、誘客を促進するためには、地域や交通機関、旅行会社等との連携も大切です。
最も大切なことは、事業者の「らしさ」、個性をきちんと伝えようとするおもてなしの姿勢です。Wi-Fi環境や非接触型決済などの受け入れ体制の整備は、最低限あるべき当たり前のものという指摘もありますが、それは、インバウンドに限らず国内消費者に対しても今後は求められる内容です。
すべてが揃っていないとインバウンドの受け入れができないわけではありません。
「インバウンド対応実務者ガイドブック」では、インバウンド受け入れの基本体制、サービスはもとより、事業者自身がインバウンドに対し、体験・交流を通じてどのような感動を提供したいかを考えることの必要性やその創り方のヒントなどを記しています。
ぜひとも参照いただき、インバウンド事業に役立てていただければ幸いです。
※『インバウンド対応実務者ガイドブック』「はじめに」より抜粋
令和4年度に、インバウンドの最新動向を踏まえた追加資料を作成しました。ガイドブックとともにご参考頂ければ幸いです。